「救済措置としての配信」ではなくて

  

配信となると価格やアーカイブについて声が上がるのは、「生の経験」以上の価値が得られないものという感覚があるからなのだろうか?

ライブのために都合がつくつかないはオフラインの時からみんなどうにかしてきたことで、配信になった途端その条件を変えてしまうのは筋が通らないんじゃないか?と。

チケットが用意されればどうにか都合をつけて行くだろうに、配信というなまじアクセシビリティが高く選択肢のあるツールであるがために、それが提示されなければ除外されているように感じてしまうのだろうが、「生のライブ経験から受ける刺激」により形成された概念によって、自分が現場にいないから従来の形のライブに劣る=配信という図式が出来上がっているのだとすれば、非常に残念。

 

配信が新しいライブの形として広まったのがコロナ禍のためというのは皮肉ではあるが、エンタメを摂取するものとして「救済措置としての配信」という思考から脱せられないままでは勿体ない。

 

デジタルの時代に、生で受ける刺激が何物にも代え難い経験であるというのはよくわかります。

ただ、人も技術も、求められれば求められるほど形を変え進化していきます。
そして今、それらをシームレスに融合させる、新たな体験を作る技術の進化がわたしたちのすぐそばまで来ています。
それはオンラインだけではなく、実際の現場でも新しい体験をもたらすもので、リアルであるかバーチャルであるか、という価値観だって変えるものにもなるでしょう。

様々な価値観がアップデートされ始める昨今、クリエイターはもちろん、我々消費者としてもまさに時代の変わり目に立っています。

 

 

技術だなんだ偉そ~な文章にしてしまいましたが、結局なんでも楽しまないと損じゃん!ということでして。乗るしかねえ、このビッグウェーブに!という感じです。

 

事実、わたしはPerfumeのファンですが、先日の様々なプラットフォームを活用して開催されたオンラインフェスの最後に行われた生配信ライブで、「そうだよ、配信って、デジタルライブってPerfumeのためにあったんじゃん!」とまで思わせられるライブ経験をしました。

ただ、Perfumeに関しては今までチームとして積み上げられてきた最先端の演出技術のリソースがあるため、これからオンライン形式を取り入れていくアーティストと同じ土俵であるとは言えないかもしれません。

 

受け取る側もそうですが、もちろん制作側も従来の形式が身に沁みついているでしょうから、思考錯誤はしているでしょう。

だから一回や二回では存分に魅力が発揮できるものにはならないかもしれない。

しかしながら、そうやって様々なアーティストや団体が新しいフォーマットを取り入れトライアルアンドエラーを積み重ね、技術者とイメージを共有することで、その分野は飛躍的に発展していきます。

スノストがキャンペーンキャラクターを務めた5Gの技術を用いた新体感ライブが良い例です。
その技術がライブ演出にどう生かされるのか?というのは過去にツイートしてたのでよかったら見てみてください。

 

 



 

 

上記のツイートでも触れていますが、Perfumeは、2018年に初めて「Reframe」という最新技術を駆使しアート演出を盛り込んだ、新しい形のライブイベントを行いました。

その時に、あ~ちゃんはこう語ってくれました。

 

「テクノロジーは冷たく突き放すようなものじゃなくて、身近で温かい。それは人間の手が入っているから。その温かさを私たちを通じて感じてほしい」

 

難解で無機質に見えるテクノロジーであっても、その奥には必ず人の思いが込められている。デジタルとアナログで触れる温度に差があるように感じられても、そこに生まれる思いは人と人とのつながりが形成しているのです。

Perfumeというチームは今までの経験を活かし、更に進化することを止めず、それを体現する活動を行ってくれたし、実際にわたしはPerfumeのライブを通して「温かさ」を何度も体感してきました。

 

わたしは年季の入ったオタクでありながらこの界隈での歴は浅いですが、若い人が多くても事務所のこれまで慣例なのか、無意識に閉鎖的なコミュニティであることを好む傾向が少なからずあるように感じているので、プレイヤーでもあった副社長はそれをまざまざと体感してきたのだと思います。

日本のエンタメ史を盛り立ててきた事務所ですから、タレントの様々な活動が創出するアートワークによって、世界に先駆ける新しい技術を生み出す側になったって何ら不思議ではないと思うわけです。

「ジャニーズをデジタルに放つ時代」と大々的に銘打って、本腰を入れて開設されたジュニアチャンネルは、試金石。

そのフロントランナーとして多方面に展開し、アーティストチャンネルに移行してからも新たな価値観をたくさん呼び込んでくれるSnow Manですから、ファンとして、誰も見たことのないような新しいエンターテインメントの発展を担う存在になれる、と期待せざるを得ないところはあるのです。

 

 

ここではコンサートという意味でのライブに言及しましたが、わたしたちは音楽に限らず、漫画や小説、舞台、演劇、美術、スポーツなど、そこから生まれるエネルギーにたくさんの刺激を受けて情緒を育ててきました。

消費者も、これからは享受するだけでなく更に自分だけの価値を見出す。
それがこれからのエンターテインメントを広げるカギになると感じています。

 

わたしは結構好きなんです、新しい世界に飛び込むの。
脳内でドーパミンがドバドバ分泌されているのがわかってめちゃくちゃワクワクする。

何においても、「やだな……」とはなから決めてかかるよりも「もしかしたら楽しいかも!」と思って新しい世界に飛び込むほうがお得。

もしちょっと思ってたのと違ったな~となっても、デジタルネイティブのわたしたちには選ぶことができるキャパシティがあります。

そうして淘汰されれば、技術が洗練されたりまた新しい選択肢が生まれたりします。

 

人と人とのつながりから生まれる思いが技術を作るし、その逆もまた然りです。 

 

変わるって、案外悪くないものですよ。